今回の記事の内容
今回は日本酒と料理の効果的なペアリング方法についてまとめました。
こんにちは、忍(@aitojyounetu)です。
料理と日本酒の「ペアリング」は料理との相性が分かり、しかも意外と簡単です。美味しいと感じることをマリアージュ(結婚)する、とも言われます。また日本酒の味わいに対し、さまざまな効果を発揮します。その具体的な効果とは一体何か。これが分かればさらに料理と日本酒のペアリングを愉しめるようになります。
~自己紹介~
飲食業界で働く傍ら2011年頃から日本酒と料理のペアリングの会を開催しました。少人数での会から大人数の宴会を含め,飲食店を通して様々な蔵元と日本酒の会を開いてまいりました。私の本名 「中畠 忍」「愛と情熱のSAKEの会」で検索して頂ければ、過去開催内容が分かる感じになっています。
なお今回お話する内容は、あくまで完全独学です。過去の経験を交えつつ解説します。
目次
1.簡単にペアリングする方法とその特性
2.ペアリングが合わなかった場合
3.料理が辛すぎた場合
4.家飲みは最高の理化学研究所
1.簡単にペアリングする方法とその特性
口の中で合わせる
簡単なペアリング方法、それは口の中で「日本酒と料理を一緒に合わせること」です。
口の中で直接会わせることにより、香味変化を期待することができます。
理想は料理と一緒に食べる方が香味変化は分かりやすいです。しかし、料理と飲料を一緒に合わせる事に抵抗がある、そんな場合は、食事の余韻が舌に残っているうちに日本酒を飲みます。瞬時に自身の舌が判断をしてくれますから、感じるままに判断すればOKです。
以上、簡単にできるペアリング方法を解説しました。
次は日本酒を合わせたときの、香味変化の特性について解説します。
香味変化の特徴をみつける方法
ペアリングしたとき、日本酒には三つの香味変化があります。
1.料理の風味が膨らむ
2.料理の特性を相殺する
3.料理が辛すぎた場合
料理の風味が膨らむ
料理や日本酒、お互いの特性が重なり、風味豊かな味わいになります。
そして同調という作用が働き、同じ風味、食感、香りの高さにより料理屋日本酒の味わいが重なることで起こります。このような作用をもたらすとき、通常よりも何倍もの風味を口内で感じられることでしょう。
素材の持つ旨味が日本酒の旨味によりコクを感じられる、などなど。素材の味わいがより強調されたり逆に香味が調整されてちょうど良い感じになったりします。
料理によって様々な特性を引き出すこどかできる、魅力的な味わいに変化します。
料理の特性を相殺する
日本酒の持つ味わいの効果は、料理の印象を和らげる効果があります。
日本酒にはさまざまな味わいの特性があり、これらの特性を上手に料理と合わせることによって発揮する効果があります。
・日本酒に含まれる酸味の効果により、甘辛いと感じるダシがまろやかな甘味になる。
・ツンとした塩味がより立体的になり、アルコール作用により円やかになる。
・砂糖を使った甘口料理をさっぱりとさせる。
・酢などの酸味を和らげ、唐揚げ・天ぷらなどの油分の緩和。
・その他、魚介類の磯の香りを緩和する。
いかがでしょう。料理の個性に応じてさまざまな相殺効果を発揮してくれます。
因みに、ここで言う相殺とは完全にお互いの主張を消すことでは有りません。
お互いの風味を上手に隠しつつ、活かすことを前提にしています。
第三の味わいに変化する
言葉の通り。料理・日本酒お互いの風味を重ねたとき、新たな味わいが誕生することです。
膨らみ・相殺などと違う点、それは料理・日本酒の味わいが上手にミックスした結果と言えます。
下記の例をみてみましょう。
・甘味と酸味が個性の日本酒に対し、しいたけや魚介類、肉類など旨味中心の料理を食べ合わせたとき。
・マリネや漬物など酸味が中心の料理に対し、甘味・酸味・旨味・苦味などバランス良い香味の日本酒を合わせたとき。
このように互いの存在がお互いの個性を高め合ったとき、新たな個性が誕生します。
これだけは覚えて置きたいこと
同じ料理・日本酒をペアリングしたからといって全ての人々が共感することはない、という点です。
なぜなら人それぞれ生まれてきた環境が違うので味覚は異なります。食生活の環境も違いますよね。好き嫌いも考慮すれば尚更です。
ですので、色々な食材とのペアリングを試すことは、楽しく飽きのこない楽しみ方です。まずは普段の食事から特別な料理シーンでペアリングの醍醐味を味わってもらいたいと願っています。
2.ペアリングが合わなかった場合
日本酒、料理ともに個性が強くて合わなかった
以前、旨味の濃い味の日本酒に、塩味の強い焼き魚をペアリングを試してしてみました。
しっかり旨味が乗っている味ならば、多少しょっぱくてもそれを補ってくれ、上手に魚の旨味を引き出すのではないか?と考えたからです。
結果、それぞれの味わいがバラバラに感じてしまいました。
そこで気が付きました。無理に個性の強い味わい同士を合わせなくても良いんだ、という事を。
それならもう一方(料理もしくは日本酒)を淡白な味わいにしてみたらどうか。このように考え、変えてみたことがあります。すると今までバラバラだった味わいが料理もしくは日本酒の風味に寄り添う形になりました。
ここで出した私の答えは、お互いの味わいを押し付けるような事はしないことです。どちらかの香味が強ければ、もう一方はその強い味わいを補う特性の味(淡い味)を寄り添うようにペアリングすれば良いんだと。
もし個性の強い食べ合わせをしてみて合わなかったと思った場合、どちらかの風味を弱い、もしくは淡白な味わいに変えてみるのも一つの手です。
なんだか酒質も人間の性格のようですね。
アルコール感の強い日本酒
アルコール感強く感じる場合は、油分の多い食材や料理と一緒に飲むことをお勧めします。
アルコールは余分な油分を洗い流し、口の中をニュートラルにする作用があります。
以前、味わい淡白かつアルコール感が強い日本酒を飲んだ時がありました。その時はイカの天ぷら、ハムカツなどのシンプルな料理に良く合いました。また、旨味のあるアルコール感の強い日本酒には、ステーキ・スペイン料理のアヒージョ・味噌カツなどの重厚な料理が合いました。
料理の場合、調味料を加えることで味わいに膨らみがでたり、濃さを調節できます。淡白な料理に調味料を加えて濃厚にする。このようなひと手間もキツいアルコール感を隠すには効果的です。
3 料理が辛すぎた場合
辛味の強い料理を食べると味覚がブレます
いわば味覚にノイズ走った状態。香味判断がつかなくなるので日本酒と合わない、という風になります。料理の中には香辛料を使った刺激の強い風味があります。こういった刺激物は舌をしばしば舌を刺激させ、麻痺させます。
このような辛味の強い料理には「料理の風味を調整する事」で日本酒とペアリングしやすくなります。
1.キムチを使った料理にはオリーブオイルを使って辛味を和らげ、純米酒や本醸造のマイルドな味わいと合わせる。
2.唐辛子を使った料理には、牛乳やココナッツなどのクリームソースを混ぜる。熟成酒や純米原酒などのアルコール度数高い日本酒を合わせる。
3.カレーなどの香辛料には、果実のジャムやソースを加えて甘さを作る。酸味の少ないタイプの普通酒・本醸造酒。また、やや甘めの純米酒、吟醸酒を合わせる。※燗酒にして料理と同じような温度帯にする。
※温度を料理と同じ目線にすることで、アルコール感を高めます。すると、お互いの味わいが重なり、辛さを感じにくくする場合があります。
日本酒に香味付けしても良いのですが、料理の風味を変えた方が、シンプルに合わせやすいです。日本酒が甘いのならば、より料理をさっぱりとした風味に変える、フルーティな香りが強ければ、柑橘系の果汁を料理に風味付けするなどのひと手間をかけるとより美味しく味わえるようになります。
いずれにせよ、日本酒の香味はそのまま変えず、料理に変化させるほうが効率も良く、簡単にアレンジしやすい。レストランでは敢えてともかく、ご家庭の食事ならよりアレンジ可能です。
4 家飲みは最高の実験場
日本酒の味わいを変えると分かる効果
日本酒の味わいを色々とアレンジすると、料理と食べ合わせた時の結果が変わります。この料理が合わない、こういうアレンジの仕方を教えるとこういった味わいになるんだという、「イメージ」がわきやすくなります。そしてこういうふうな飲み方をしたらこういう味わいになるんだなというのが大体予測できるようになってきます。
具体的なアレンジ方法とは
一番簡単な方法は日本酒の温度を変えることです。温度帯によって感じ方が変わります。日本酒は冷やすほどシャープな味わいに感じられ、温めるほど複雑さが増すという特徴があります。(日本酒の温度帯を解説しているブログの内部リンクを貼る)
さらにアレンジを加えた例は下記です。
・冷えてた日本酒を常温に戻す燗冷まし
・日本酒に水を加えた「加水割り」
・柑橘系ジュースを加えた「生搾り」(既製品も可)
・日本酒を凍らせた「氷酒」。だし汁を加えた「出汁割り」
メリットとしては手軽に簡単にできることです。まずは温度帯を色々な角度から楽しんでみてはいかがでしょう。
自宅の調味料から味変を楽しむ
自宅の調味料を探してその調味料を使って日本酒を飲もうという趣旨です。これなら料理を作らずとも日本酒の味を変えつつ、調味料の風味にあった料理をイメージしつつテイスティングできます。
おすすめの調味料
甘味:砂糖・はちみつ
酸味:塩・レモンジュース・醤油
旨味:味の素・ソース・オリーブオイル・バター・油・味噌
苦味:(調味料)
その他:ドレッシングソース・胡椒・わさび
日本酒と調味料を直に合わせるとダイレクトに味わいの変化を感じ取れます。濃いめの味わいにも関わらず、日本酒に違和感がなければペアリング向きの調味料です。味わいがそれぞれ別々に感じたならばあまり合っていないなと感じるはずですし、片方の味しかしないのならばそれはどちらの味が勝っていたという結果になるはずです。
もちろん調味料だけ舐めるのはちょっと抵抗がある方がいらっしゃるかもしれません。そういった場合は、豆腐や生野菜、簡単な料理などに調味料を食べ合わせ方をおすすめします。
ひとつの日本酒に対して色々な味のパターンを変えて試していくこういったことをしていくと味覚のパターンが増えて恋と酒には遠いどういうお料理が合うのかなとイメージしやすくなってきます。
五感を研ぎ澄ます
ここで解説してきたことはすべて五感を研ぎ澄ますためのトレーニングです。
普段からこういった様々な飲み方に慣れていった結果、下記の様な発見をすることができるようになりました。
・どんな味ベースの料理が合うのかがイメージしやすくなる。
・料理から日本酒を選びやすくなる。
・日本酒の飲み方をさまざまな角度から楽しむことができるようになる。
・一つの飲み方に固執しなくなる。
・色々な日本酒のジャンルに挑戦しやすくなる。
レストランなどで食べてみたい料理が見つかった時など、どんな味わいの日本酒を飲んだ方がいいのかがイメージしやすくなったりします。また、調味料をちょい足しする楽しみも増えます。色々な日本酒と合わせてみようかなという意欲が出てくるのでとても重宝してます。
家飲みをゲームにしてみる
これは経験量が特に重要。慣れるには時間がかかります。しかし、一度慣れてしまうと、ややこしい理屈がいらず、肌感覚で楽しめるようになります。
私は「これはちょっと合わないな」と思われる料理との組み合わせも一種のゲームとして挑戦することしています。
豊かな感性と科学を超えた自分の力を内面に発揮できるって素晴らしいことじゃないですか。
それは誰のためのものでもない。自分だけのオリジナルです。
これからの新しい日本酒の出会いに感謝しつつ、そして新しいペアリング効果に期待しつつ。自分への豊かな食生活と一緒に、毎日の晩酌を楽しんでいます。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
中畠忍
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