【マナー違反?】注ぎ口のある日本酒とっくりを使う件について【飲食業ではどうか】

 こんにちは忍aitojyunetuです。

秋も深まり、日本酒を熱燗で楽しむ方も増えてきたのではないでしょうか。
熱燗といえば、「徳利(とっくり)という酒器を使い、温めて飲む」これが一般的な熱燗の飲み方です。
去年、私の所属するNPO法人SSI(日本酒サービス研究会)の代表理事が、テレビ出演し、「徳利についてのマナー」について発言したところ、SNS界隈では予想外の反響がありました。
事例
それは「注ぎ口から日本酒を注ぐのはマナー違反」という話題でした。
番組の内容は下記のURLから
私の見解としては「ああ、この様なマナーもあるんだね」という感想のみですね。
一般的な認知度が30%と言いますから、大部分の方が知っていてもこの程度なのかな、と思った次第です。
かく言う私も、この記事を見るまでは知りませんでした笑
さて、それでは本題です。

今回の記事の内容

上記のような件がある中で、はたして周りの飲食店では認識しているのか?

どの様な対応をしていたのか、また、どのような徳利があるのか。

飲食業20年ほど勤めた私の経験の中から検証しつつ、解説します。

【悲報】働いてきたどの飲食店も「注ぎ口ある徳利」を使用していませんでした

「注ぎ口型の徳利」を使用されていなかった原因を探る

表題通りなのですが、私が今まで働いてきたどの飲食店も「注ぎ口のある徳利」は使われていませんでした。
しかし謎です。前職のHPや食べログなどを確認してみましたが、どの画像も丸型の徳利ばかり。
逆に何故だろうという疑問が湧いてさらに調べたり、思い出したりしました。
徳利でググっていたとき、一個だけ使っていた事実を発見しました。
結構ググルと見つかるものですね笑
ということで、全く使っていたわけではありませんでした。
しかし、「ほぼ9割は丸型の徳利を使用していた」ことになります。
理由は以下のように考えられます。

・日本酒に特化した和食店だったから?

・業務用の高級酒器を使用していた

・徳利以外の酒器を使っていた

・統一感を見せるため、あえて丸型徳利にした

・注ぎ口のある徳利の種類が少なかった

飲食店ではある程度数をそろえるために、業務用の酒器を専門業者に発注するパターンがあります。
私が働いていた当時の職場は都内中心(池袋・銀座・霞ヶ関・青山・品川・笹塚・新橋・五反田 )でした。
この中の職場のうち、3割が「専門業者」からの購入、残り7割は個人買いなどで揃えた「こだわりの酒器」を購入していました。
徳利そのものを使っていない店舗もありました。
※小さい’やかん’とか、ミニボトルを直接熱燗していました※

そもそも「飲食店」も徳利に関してのマナーを知らない説

数ある飲食店の中には「注ぎ口型の徳利」を使用している店舗はもちろんあるでしょう。
しかし面白いのが、上記すべての飲食店に勤めていた環境にもかかわらず、周りの上司ふくむスタッフからも「徳利は注ぎ口と反対を使う」という声をまるで聞かなかった事です。
つまり、日本酒を取り扱っている飲食店でも「その様な声」を聞かなかったということは、一般的に認知されていないのは当然だった、というわけです。

丸型徳利の上手な使い方

唎酒師の観点から言いますと、「日本酒ビギナーほど注ぎ口型徳利を使うべき」と考えます。
それは「丸型の徳利と比べて取り扱い方が難しい点」にあります。気をつけて注ぐ点は以下の通り。
・少しの角度で溢れ落ちるため慎重に注ぐ必要がある
・熱燗時、全体的に熱が伝わりやすいため、ヤケドしないよう持ち方を工夫する
・注ぐ速度に注意し、ゆっくりと注ぐ
例えば、「丸型徳利」に9割以上日本酒が入っているとします。
すると少し傾けただけで日本酒が溢れ落ちるように出てきます。
私はそれで何回もテーブルに垂らしてしまった経験があります。
また、レンジでチンをしている居酒屋も少なくありません。とびきり燗などの場合は特に注意が必要です。
全体的に熱さがきわだっていますので、慎重に注ぐ必要があり、ビギナーの方には少し難しいかなと良く接客しながら思っていました。

注ぎ口型徳利のほうが使いやすい

その反面、「注ぎ口型徳利」は日本酒が落ちる軌道を修正しやすいため注ぎ方も若干楽です。
また、注ぎ終わる時に溢れやすい丸型とは違い、スッとお酒をキレやすくする効果もあります。
ご自宅でもそうですが、ぜひ初めて熱燗つくりたいと思われる方には遠慮せずに「注ぎ口型の徳利」を使ってみてください。

実は奥深い!「相手のおちょこに日本酒を入れる時のコツ」

相手に日本酒を注ぐときは阿吽の呼吸が必要です
厳密にいうと、徳利に入っている日本酒の量、温度、そして注ぐ角度によっても相手のおちょこに入る量が変わります。
また、相手に慣れも必要になるでしょう。
丸型徳利に関していえば、相手とのおちょこと徳利の角度を確認し、さらに適切なスピードで注ぐことです。
そうすれば徳利からお酒をこぼさず、かつスムーズに日本酒を注ぐ事ができます。
もし、ビジネスにて、相手に日本酒を注ぐ機会があったら、ぜひ上記を意識しながら注いでみてください。

 唎酒師の試験に役立つ練習方法を公開します

ちょっと補足です。
実は以前、私が受験した唎酒師の試験では日本酒の一升瓶を持ってデキャンタに「一合分の量を入れる」試験がありました。
もし今後、唎酒師の資格受験される方がいらっしゃいましたら、ぜひ下記の練習方法を試してみてください。

 

1.何でも良いので一合(180ml)入る容器を用意する
2.一合入る徳利を用意する(出来れば丸型の徳利)
3.ゆっくりと徳利から容器に一合入れる(繰り返し)
3番を繰り返すと以下のような慣れが生じます。
・一合入れる感覚が身につく
・徳利を注ぐ練習になる
・飲食業の方は「お酒を注ぐ所作」に慣れる
飲食スタッフの方はテーブルサービスで日本酒を注いだときの「量を正確に注ぐ」練習にもなり一石二鳥になります。
ぜひとも試してみてください。

徳利に代わる?!注ぎ口のあるさまざまな酒器を紹介します

徳利に代わる便利な酒器「片口」(かたくち)

我が家愛用の方口。一合だとナミナミになってしまうので、90mlずつ注いでちょうどよい。
片口(かたくち)はさまざまな形があり、料理のそばに置くことで違和感のない存在感が魅力です。また、ビギナーから愛好家まで幅広く愛用できる酒器になります。
手に持ちやすく日本酒も片口へ注ぎやすい。しかも注いだ後の量が一目で分かりやすい点も良いです。
素材は伝統的なタイプやガラス製などの清涼感を演出させるタイプがあります。
価格は安価〜高価とさまざまなタイプがあり、見てても飽きない種類がたくさん見つかります。
温めた日本酒を入れることは出来ますが、空気に触れる面積が大きいためすぐ冷めてしまうのが難点。
また、徳利のように直接温めることは出来ないので注意が必要です。
常温・冷酒にこの片口が最適です。
普段の食事風景を楽しく演出できる良いパートナーになるでしょう。

冷涼感が魅力的な「ガラス製デキャンタ

 

自宅で日本酒を飲むとき、飲食店、または日本酒好きな方へのプレゼントなどに喜ばれる酒器になります。
見た目にも鮮やかで、日本酒の残量もしっかり確認できます。また、非日常空間を、演出する効果があります。主に冷酒用に使用します。
欠点もいくつかあります。
わりと繊細な形状をしているので割れやすい。
また、あくまでデキャンタに使用する目的であり、保存容器として使用するのははちょっと厳しいです。
さらに、奥まった形状のため洗浄には棒状のスポンジを使用するなどのメンテナンスが必要になります。
デキャンタの種類によっては氷を入れて冷やす演出もできるので、記念日などの食事のとき、レストランにて日本酒を楽しむときなど、ハレの日にぴったりな演出が可能になります。

近年、ご自宅で愛用されている「チロリ」

 

チロリの中でも見た目が重厚感・高級感があるこちらの「錫のチロリ」をオススメします。
オススメする利点は3つあります
・錫の特徴として熱を通しやすいので直ぐに冷える、温まる。
・酸味の強いタイプの日本酒を「柔和な口あたり」にさせる効果がある
・伝統工芸品としての価値があり、贈答用としても喜ばれやすい
冷酒用、熱燗用としても最適で「錫の酒器」ならでは演出効果が高いです。
やはり難点としては、価格の問題があります。
素材の錫というネックを外せば意外と安価で購入可能です。

一段目の線から90ml、2段目は180mlとなっており、少しずつ日本酒を飲みたいかた向けにオススメです。

一段目の線から120ml、2段目は220mlとなっており、少量ずつでは物足りないかた向けにオススメです。
上記のアルミタイプのチロリを使用している飲食店が多いです。
私がたまに行っているおでん屋の屋台でも使用していました。
取手もついているので非常に使いやすく、メンテナンスも簡単、かつ冷酒・熱燗にも気軽に使用できる優れた酒器といえます。
本日はこちらで終わります。
最初にもどりますが、徳利に対しての作法(マナー)がに関しては、私はあるならそれで良いというスタンスです。
複数人で日本酒を飲むとき、かつ某番組でテロップがのっていたように「法事などで演技を担ぎたいとき」
気を遣う相手ならそうすると思います。
皆さまはどうか穏やかな気持ちで楽しい日本酒ライフをお過ごし下さい。
臨機応変にいきましょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
中畠忍

 

ABOUTこの記事をかいた人

にっぽんの酒と造る人そして飲食人を応援してます。飲食業20年。銀座バーテンダー→SSI公認唎酒師→全国梅酒品評会の評議委員→日本酒テイスターのプロ酒匠(さかしょう)として接客実績を積む→退職→現在は、飲食事業・日本酒についての情報発信・ブロガー初心者・美味しい食べ物を五感で愛でる毎日