【中/上級者向け】適切な日本酒の保存について語る

何か良い日本酒の保存方法ってあるのかな?

冷蔵庫保存で大丈夫でしょ。具体的な保存期間ってあるの?

このような疑問にお答えします。

 

こんにちは忍(@aitojyounetu)です。
20年ほど飲食業界にいました。

今回は下記の2つのポイントから深堀しつつ、解説していきます。

今回の目次
1.日本酒の冷蔵庫保存について
2.【重要】冷蔵庫保存した日本酒は早目に飲むべき理由

 

よろしくお願いします。

 

今回の記事の内容

1.日本酒の冷蔵庫保存について

基本的を抑える

日本酒の保存について下記の3つは必須です。

・直射日光の当たらない環境での保存

・温度の上がりすぎない環境での保存

・振動が少ない場所での保存

ではこれら以外の適さない場所で日本酒を保存するとどうなるのか?

・光が当たると日光臭と呼ばれる匂いが出てきます。さらに紫外線の変化により日本酒の色合いが変わります。

・温度が上がると老ね香(ひねか)と呼ばれる匂いが出てきます。さらに酸味が出たり、アルコールの苦味が吐出したりと香りが複雑化。特に甘くてフルーティーな日本酒には大敵。こういったタイプの酒を思いっきり熱くして飲んでみるとより分かりやすいでしょう。

・日本酒に過度な振動を与えてしまうと、より酸化が促進します。もともと酸味の強い日本酒がさらに強く感じすぎてしまう場合があります。また、酸化により色合いも変化しやすくなります。

これらを避ける意味でも、上記の3つがまずは保存の基本となっています。

 

冷蔵保存するときはたて置き?よこ置き?問題

結論からいいますと「たて置き」「よこ置き」には、 ”それぞれの保存方法がある” です。

保存する方法によっては場所も考えますし、日本酒の容器についても考慮しなければなりません。さらに深掘りすると長期保存や短期保存の問題もあります。今回はそこまで解説します。

冷蔵保存する際にはたて置きを推奨します

日本酒が漏れるのを防ぐためです。お酒の注ぎ口を上向きにて保存します。さらに他の冷蔵商品との接触を避け、日本酒の瓶が割れるのを防ぎます。

横向きは漏れる心配がある

日本酒の瓶の蓋が緩めに締まっていた場合、何らかの拍子で漏れる場合があります。

実際、横向きに置いていた時、漏れ出して大変でした。きちんと瓶のキャップを'閉めたつもり'が緩んでいました。そこから時間をかけてポタリポタリと冷蔵庫内に広がっていったのです。こんな大惨事を招かないためにも縦置きを推奨します。

 

しっかり密封しましょう

冷蔵庫保存をしたい。けれど横向きじゃないと入らない。

そんな場合はキャップ部分をしっかりと密封します。

そんな場合はビンが割れないよう、全体に紙やラップを巻いておくと良いでしょう。

 

先程も言いましたが、フタの種類によって保存する難易度が変わります。特に日本酒の場合、下記の3種類があります。

「キャップ(王冠)型」

「スクリューキャップ型」

「コルク型」

密封に優れたタイプはスクリューキャップ型です。

押し込むタイプの「キャップ型」と「コルク型」は閉めが甘いと漏れやすいですまた、日本酒のキャップ型はアルミに包まれたプラスチック製です。横置きを想定して作られたものではありませんので、注意が必要です。

 

ラベルをきれいに守る”ラップ巻き”

冷蔵庫保存の場合、ラップを全体的に巻くことがオススメです。

ボトルラッピングの理由

・ラベルがはがれない

・一度冷やせば簡易クーラー代わりになる

・滑って落ちてくる心配が減る

このようなメリットがあり、便利です。

フタが王冠(押してフタをする)の場合もありますので、なんらかの拍子に取れないよう、注ぎ口にラップを巻けば安全です。

最後に瓶の蓋(ふた)がしっかりと閉まっているのを確認します。

 

冷蔵庫に日本酒をたくさん保存している場合もあります。

ほかのビン同士が接触によって割れる場合もあります。適度な距離で保存することも大事です。

日本酒を冷蔵保存するとき、ご家庭用の日本酒はほぼ野菜室もしくはたて置きのサイドバーに置く方がほとんどだとおもいます。

もう一度確認しますが、よこ置きで保存する際は、こぼれないようにしっかりと管理保存してみてください。

 

開栓後はどのくらいで飲むべきか

日本酒を30本以上同時保存していた私が断言します。
「美味しいうちに飲む」ために「飲みきる為に保存している」という意識で保存してください。

基本は「開栓後の日本酒は早めに飲みきることが大切」です。

もっというと「ビン内の酸化が始まって、本来の味わいが崩れる前に飲みきってください」ということです。

 

どのような酒質が劣化しやすいか

特に注意していただきたい酒質があります。それが下記の3点です。

「香りが高く柔らかな口当たりの日本酒」
「あっさりしていて爽やかな旨味のある日本酒」
「全体的にシンプルでコンパクトな味わいの日本酒」

このような日本酒は味わいの変化(スピード)が早いです。

これらは『旨味が少ない』という共通項を持っています。

すなわち、上記の日本酒には「熟成のスピードが速く、旨味成分が少ない為、酸化の影響を受けやすい」という特性を持っています。

逆に旨味が「ノった」日本酒はずっと置いておくのは良いのかというと、この部分はもう好みの領域であり、利き酒師の立場から言わせてもらうと、美味しいと感じるうちに飲みきったほうが吉というほかありません。

逆に時間を置きすぎたせいで、さらに味が変化し、飲める状態ではなかった!となれば本末転倒ですよね。

「美味しいうちに飲む」には「飲みきる為に保存している」という保存する意識が大切です。

 

長期保存して気がついたこと

基本的に日本酒は “時間が経てば経つほど香味変化が現れる”飲料です。

しかし、冷蔵保存しても、日本酒によってはあまり味が変わらないものもあります。

 

問題はその判別をあなたができますか?と言うことです。

 

私も冷蔵庫に2,3年と日本酒を保存していた時期がありました。

 

・あまり手に入らない品物だから

・美味しかったから余分に保存していた

・好みの日本酒だったから同じ銘柄を購入し保存していた

・一度にたくさん買い続けて開封する機会を逃した

 

これは実際に私が保存していたときの理由です。

 

しかし、理由の中には長期保存し美味しくなる保証はどこにもありません。

 

こうして私が出した結論は、長期保存するくらいなら”その日のうちに開けて飲んだほうが、確実に幸福度は増す。でした。

 

今流行っている日本酒や普通酒に至るまで自宅で実験した結果から分かりました。

保存期間は約5~10年の間。冷蔵保存した日本酒の酒類は以下の通り。

・普通酒
・純米酒
・特別純米酒
・純米吟醸酒
・大吟醸
・純米大吟醸
・生酒タイプの純米大吟醸
・無濾過生原酒
・発泡タイプ
・日本酒仕込み梅酒スパークリング(ガス添加タイプ)

これらは前項で申し上げました『比較的 旨味の少ない日本酒』を中心に保存していたものです。

結果、保存する種類によって味わいにかなり差がでました。

 

特に「純米大吟醸」は著しく香味変化(この場合は劣化)が見られ、まさに味わいは180度変わっておりました。

フルーティさは消えて、ややケミカルな旨味が主体になっており、完全に老(ひ)ねた状態になっていました。

その他の種類に対して、熟味が進んでいたものといないものがありましたが、やはり酸化の影響からか当初イメージしていた味わいにはほぼ遠ざかっていました。

このような経験から、熟成を得意とする日本酒蔵『以外』の長期保存はNGという結論を10年目で気がついた次第です。

 

熟成を得意とする蔵とは

いわゆる熟成酒と呼ばれる造りに秀でた酒蔵を指します。

中畠おすすめ熟成・長期保存に向いた酒蔵一覧(Twitterのフォロワー様より)

岩瀬酒造:岩の井

白木恒助商店:達磨正宗

小嶋総本店:東光

 

普通酒・本醸造・純米酒・長期熟成酒なら1年以上経っても旨いと感じられた3蔵元の酒です。ただし、冷蔵保存してもゆっくりと酒質は変化します。こういった旨味の変化、酸味の変化を受け入れる事ができる方のみ推奨します。

2.【重要】冷蔵庫保存した日本酒は早目に飲むべき?

結論はイエス

結論はイエス

 

日本酒の栓を開封したら早めに飲み切るほうがベストです。

なぜなら、酸化して香味変化が起こりやすい飲料だから。

 

特に冷蔵保存を推奨している日本酒ほど顕著にあらわれてきます。

 

冷蔵保存を推奨しているということは、それだけ繊細な造りに仕上がっている、ということです。また、保存して香りや味わいに変化がありました。それが美味しくなかった場合、完全な自己責任ですよね。酒蔵は一切の責任を負うことはできません。

 

酒蔵が開栓後にできだけ早く飲んで欲しいとラベルに記載するのはそのためです。

 

開栓したらなるべく早く飲み切る意識は、日本酒を美味しく飲むポイントです。

 

早飲み派 or 遅飲み派

早飲み派とは早く飲み切ることでが出来る方

「日本酒を一日に2合以上飲める」ような方は早飲み派。

また私のように、一日に日本酒をたくさん飲んでも2合までとかの方は「完全に遅飲み派」です。

ある程度ストックしても問題はないでしょう。逆に遅のみ派の方は多くのストックを持っても手持ち無沙汰になってしまう可能性があります。

日常的に日本酒を1合以上、平気で飲める方こそご自宅にて日本酒をストックしても、日本酒の循環できてしまう。非常にうらやましい限りです。

早飲み派は味わいが変化する前に飲みきることができる。長くゆっくり時間を楽しみながらでもたくさん飲めそうです。

 

遅飲み派

飲む頻度の遅い「遅飲み派」は大量ストックすればするほど”酒の品質が劣化する”というデメリットがつきまといます。

なぜなら、飲む頻度が穏やかな飲み方をします。一日一合とか、飲まない日もあったり。

そんな方には一本一本じっくり飲みつつ、さまざまな料理と合わせてみたり、加水やロックスタイルなどさまざまな飲み方を変えつつ愉しむ方法をおすすめします。

あまり飲む頻度が少ないからこそ、希少な銘柄を保存しておきたい気持ちは良くわかります。

私も遅飲み派ですし、かつて大量保存している時期がありました。

しかし、飲む頻度が変わらない限り、美味しい時期を逃してしまう恐れがあるんです。

それだけはどうにかしたいですよね。せっかく買ったお酒ですから。

飲むスピードや頻度が少ない遅のみ派なりの飲み方を模索すべきと考えます。

 

冷蔵保存する本数を決める

これら冷蔵保存する際のチェック項目になります。以下のとおり

・日本酒を保存する場所の確保

・自分の日本酒の飲用頻度

・購入した日本酒の日付を確認する

・購入した日本酒の種類を確認する

ポイントは『冷蔵保存すべき種類』の確認と『これは早く飲んでしまわないといけない日本酒』かどうかをセットで確認する事が一番重要です。

まずはこちらを確認し、冷蔵保存できる本数を確認します。

例えば3本までしか冷蔵保存できないの4本以上購入すべきではない、という事が分かるはずです。

そうは言っても、なかなか手に入らない日本酒を見つけてしまったとき、つい購入しちゃうんですよね。分かります。

私はその「つい」を100回以上繰り返しました。結果は冒頭の通り。

冷蔵庫をお酒で占領し結局飲まないまま放置・・なんてことにならないためにも、ご自身の飲む頻度にあわせて適切に購入し、適切な場所で適量を保存しする。そして美味しいままの状態で日本酒を楽しむことをおすすめします。

 

 

飲みきれないストックは飲むテンションを下げる話

最後に自分語りします

ここまでお付き合いくださいましてありがとうございます。
私は日本酒・焼酎その他あわせて約900本ほど酒を収集した、自称マニアでした。

飲みきれないお酒があるほど実はテンションがあがると思いきや、以外とテンションって下がりやすいことが分かりました。

それは飲み切ることが出来なかったときの悲しさ、あんなに美味しかったはずの味がいつの間にか変わっていたこと、でした。

気分しだいで飲む種類を代えて飲む楽しみはあります。
お酒を集めはじめた当時は、勉強のためと、全て飲みもしないお酒を買い込んではテイスティング用として飲用してました。それが徐々に純粋に楽しめなくなってきてしまいました。

 

それでも日本酒の魅力にドンドンはまっていった

当時は日本酒を売る仕事に従事していたため、自宅がお酒の勉強の場。冷蔵庫は家庭用のものを2台購入しました。冷蔵で約20本あり、居間の棚にはずらりと100本以上開封したお酒が並んでいました。

例えば、日本酒なら2本同じ日本酒・焼酎を購入し一本は保存し、一本は開封しティスティングしていました。

そうすることで、満足感を得ていました。

 

「好きなお酒を集めることに執着した」結果

引っ越しの際、とても困りました。これまで集めていた飲みきれないほどのお酒たちを処理できませんでした。結果、友人や知人にタダであげることになりました。

 

本来は自分用に購入したはずの日本酒。購入しすぎるとこの様な結果になります。

くれぐれも皆様、購入も適量敵酒を心がけてみると、このようにならずに済むでしょう。

 

重要なのは目的を持って適切に保存すること

 

本当に飲みたいお酒なのか?をまずは考えて購入した方が良いですね。

 

大量にお酒をストックしてしまうと、同時に何に向かっていっているのか?が見えにくくなってしまうような気がします。

 

お酒に美味しさを求めるのであれば、どうしてお酒を集めているのか?を振り返ってみるのをオススメします。

 

最後の記事は、いままで過ごしてきたお酒たちとの記録の一部を恥ずかしながら掲載しました。

適切な日本酒の状態での飲用をオススメするために、引き続き勉強し続けます。

 

今回はこちらで終わりです。

 

ぜひ、みなさんも美味しく飲みきる目的を持って日本酒やその他のお酒を愛でてやってください。

たとえ冷蔵庫に保存していても、「放置」は良い方向に向くことはありません。

 

こういった体験を経た私は、適切に、ゆっくりと、しかし早めに日本酒を飲む愉しみを心がけます。そして次の日本酒を買いに行きたいと思います。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

中畠 忍

 

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ABOUTこの記事をかいた人

にっぽんの酒と造る人そして飲食人を応援してます。飲食業20年。銀座バーテンダー→SSI公認唎酒師→全国梅酒品評会の評議委員→日本酒テイスターのプロ酒匠(さかしょう)として接客実績を積む→退職→現在は、飲食事業・日本酒についての情報発信・ブロガー初心者・美味しい食べ物を五感で愛でる毎日