今回の記事の内容
初めて日本酒の利き酒をする方も、利き酒のコツを知りたい方必見!
【酒匠】本格的な利き酒の完全解説をします。
こんにちは、忍(@aitojyounetu)です。
10年以上、飲食業界にて利き酒をしてきました。
プロ目線で分かりやすく、日本酒の利き酒方法をお伝えします。
利き酒とは、日本酒を楽しむ為のテクニック
日本酒の利き酒(テイスティング)とは
本来、日本酒の管理・品質の向上を目的としています。
業務用に取り扱う会社やお店などが良い例ですね。
プライベートではどうでしょう。
日本酒を楽しむため・好きだから飲む。
こんな感じでしょうか。
もちろん私もそうです。
ただし、知っていただきたい事があります。
‘利き酒は日本酒を知る為の技術’でもある、ということです。
・もっと日本酒を楽しみたい
・日本酒の知識がほしい
・利き酒の大会に出たい
・利き酒師を取得し、利き酒のプロをめざしたい
こんな向けの、利き酒の完全マニュアルとなります。
今回は楽しみながら学べる利き酒のテクニックをたくさん盛り込みました。
ぜひ、日本酒を注いだグラスを片手に実践してみてください。
1.簡単に日本酒の香りをとらえる方法
香りの強弱を判定する
まずはじめに
香りの強弱を判別するコツをお教えします。
それは
日本酒の温度に気をつける ことです
日本酒を冷やすと香りは閉じた状態になります。
逆に温まると香りがだんだんと開いていきます。
この特性を利用します。
(閉じる=弱い状態 開く=強い状態)
つまり、ある程度温度を上昇させてから利き酒をすると
香気を感じやすくなります。
私がよく実践している事
‘冷酒は注いでから暫く待つ’ことです。
この方法が一番簡単です。
時間は3~5分ほど。
その他
香りを高める有効な方法には下記もオススメ。
- 揮発性の高いグラスに注ぐ
- 酒器に注いだら両手を使いグラスに両手を添える
- 幅の広いグラスに注ぎスワリングする
まとめ
香りが弱い日本酒を冷蔵すれば更に弱く感じてしまいます。
そんな香りの低い日本酒ほど少し温度を上げてみましょう。
利き酒をする時は、少し注いで待つ。これだけ。
難しく考えずぜひトライしてみましょう。
以上です。
え?これだけ?と思われるかもしれません。
はい、本当です。
常温の状態でも良いのですが
ある程度冷やしたほうが美味しい日本酒って
たくさんあります。
面倒かもしれませんが
少しだけ待って香りを嗅ぎ比べてみましょう。
次は香りを分かりやすく例える練習方法を解説します。
香りを例えてみよう
■身近なモノに置き換える
香りをイメージしやすくする為に、身近なモノに例えてみましょう。
プロである利き酒師は、こういった例えを分かりやすく捉えるコツを知っています。
そのコツとはモノに例えることです。
例えば、果実系、花系、野菜、キノコ類 など
甘い香りなら果実や花に例える。
酸味のある香りならレモン・グレープフルーツなどの酸味を思わせる香りに例える。
まずはどこにでも売っている身近な食材に目を向けてみましょう。
身近な香りのイメージを思い浮かべることで、お酒に対する香味イメージはより強くなります
香りの具体例は次の実践編にて用意しました。
後ほど香りと味わいのイメージをセットで覚えてみましょう。
利き酒に有効な手段
- 香りの強い日本酒を選ぶ
- 香りの強いタイプと弱いタイプを利き比べる
- シンプルな味わいの日本酒を選ぶ
- 香味をより感じやすい酒器を選ぶ
上記の通り。
過去10年以上テイスティングを通して得た結論です。
特に上記4つに当てはまる日本酒は、飲みやすく、香りに特化しているタイプになります。
香りが強ければ複雑な香り、とは限らないのです。
シンプルな香りのタイプから利き酒しよう
シンプルにリンゴ・バナナ・グレープフルーツのような香りの日本酒とか沢山存在しています。
こういった、分かりやすいタイプの日本酒を使って
利き酒をはじめた方が香りを判別しやすいです。
オススメは’利き比べ’
利き比べの順序
- 複数の日本酒を用意
- 香りを確かめ合う
- 香りの強さ・高さを感じとる
- 具体的な香りの違いは何かを見つける
- 文字に書きしてみる
このような感じです。
ポイントは5番目です。
どんな紙でも構いませんので、書き出してみましょう。
微妙な香りの差をより明確につかみやすいです。
もし、ご自宅などに日本酒が2本開いてましたら実践してみましょう。
2.【実践編】日本酒をグループ分けする
次に味わいもイメージしていきます。
一番始めにすることは、自分の好きな日本酒はどんなタイプなのか分析することです。
なぜなら
具体的な香味のタイプ例
- 甘くてスッキリした香りのタイプ
- 香りは穏やかでスッキリとした水のような飲み口タイプ
- 膨らみのある旨味のイメージが多いタイプ
- 熟成した練れたタイプ
- キリリとした酸味の超辛口タイプ
このように、自分の好きな・日常的に飲んでいるお酒のタイプをイメージするだけでも
香味に対する印象が変わってきます。
同時に苦手な香味も思い浮かべましょう。
できるならどういう香味が苦手か知っておくと更に便利です。
理由は先程と同じで、自分にとって記憶に残りやすい酒質だから。
ちなみに私は
どっしりとした濃厚な香味タイプが好きです。酸味の効いたスカっとしたするタイプは逆に苦手なタイプになります。
グループ分けのメリットを書き出してみました
下記のとおり。
・酒類のタイプが分かる
・同じ香りの系統だと分かる
・利き酒する時思い出しやすい
・利き酒をする時の参考になる
では、実際にどのようなグループ分けがされているのか見てみましょう。
香りによる3つのグループ分け
以下の3タイプを香気成分(こうきせいぶん)と言います。
①吟醸香・・酵母菌に由来するもの
②原料香・・原料に由来するもの
③熟成香・・熟成に由来するもの
例えると以下のような感じです。
「吟醸香」は果物をおもわせるフルーティーさが主体的
「原料香」はお米などの乳製品系の香りが主体的
「熟成香」は練れた味噌・醤油・香辛料などの香りが主体的
いかがでしょう。日本酒の香りといっても大きくわけるだけでもこのような特徴があります。
お手元に日本酒があればぜひ瓶の上からスンッと嗅いでみてください。
どんな香りがするでしょうか。
■香りをさらに分別する
さらに品目数によって下記のような香りが分類されます。
下記の「具体的な食品類・物質類」の名前に置き換えてみましょう。
①吟醸香・・酵母菌に由来する香り
果実類・・甘味、酸味
花類・・甘味
野菜類・根菜類・・苦味、渋み
香草類、柑橘類・・苦味、渋み
柑橘類の果皮・・苦味、渋み
植物類・・その他
ミネラル類・・石
②原料香・・原料に由来するもの
乳製品類・・旨味、甘味、酸味
米製品類・・甘味
菓子類・・甘味
穀物類・・苦味、渋味
穀物類(米類)・・旨味
③熟成香・・熟成に由来するもの
糖蜜類・・甘味
ドライフルーツ類・・酸味
木類類・・オーク、ヒノキ、菩提樹
ナッツ類・・苦味、渋み
出汁製品・発酵調味料類・・旨味
スパイス類・・その他
茶葉類・お香類・・その他
キノコ類・土類・・その他
油脂類・皮類・・その他
ヨード類・・その他
煙香類・・その他
日本酒にはシンプル~複雑な香りまでさまざま。
上記の要素の中から「特に香りの強いものをピックアップ」し、書き出してみましょう。
それがその日本酒の代表的(主体的な)な香りというわけです。
香りの具体例
これはよく、ソムリエの方も使っている比喩表現になります。
なぜ使うのか。それは「初めて飲む方へどういう酒質なのかを分かりやすく伝えるため」。
なので、誰もが一度は経験し食した「食べ物」が、’分かりやすい表現方法‘というわけです。
例えばこんな感じに表現できると分かりやすくまとめ
果実類・・甘味をイメージさせる食品=パイナップル、ライチ、オレンジ(具体例)
穀物類(米類)・・旨味をイメージさせる食品=飯米、米麹、マシュマロ (具体例)
スパイス類・・その他をイメージさせる食品=黒胡椒、シナモン、グローブ (具体例)
’香りの具体例をイメージする方法’ まとめ
- 大きく3タイプの味わいから選ぶ
- 具体的な香りの要素を具体的なモノをイメージする
- 香りから具体的な食品をイメージする
この3点を意識しながら香りを嗅いでみると、より具体的な要素を発見しやすくなります。
ぜひトライしてみてください。
3.品目(具体例)を書いてみよう
香気成分はシンプルか、複雑かを判断する
ここでの目的:香気成分が少ないのか、多いのかを判断することです。
特性(個性)を把握するための重要な部分になります。
判断手順は以下の通り。
- 香りを嗅ぐ
- 香りの強弱を確認する
- 香りの成分の複雑性を判断する
香りの4タイプを覚えよう
基本は4つの香りから成り立っています。
・甘味を思わせる香り ・酸味を思わせる香り ・旨味を思わせる香り ・苦味を思わせる香り
上記の成分を思わせる香りが少なければシンプル、多いほど複雑と言えます。
4.利き酒(味わい)の方法
さて、ここから
具体的な味わいの利き方に入ります。
ポイントは6つあります。
1.お酒を口に入れつつ空気を吸い込む 2.口の中で日本酒を揺らす 3.口の中に日本酒を入れた状態で鼻呼吸する 4.飲み込むタイミングで鼻から息を出し繰り返す 5.飲み込んだ直後の余韻の時間を計る 6.余韻が消えるまでに個性の特徴を書き出す
順を追って解説します。
1.お酒を口に入れつつ空気を吸い込む
口から息を吸って鼻から息をだします。
これは「最大限に香りを感じるようにする手法」の一つです。
※このとき感じた香りを「含み香」(ふくみか)といいます。
※正確には’鼻から出したとき感じる香り’のこと。
香気を感じやすくするため
口から息をすうことで、空気を取り込みやすくします。
その分、香気をためる事が出来、より香りを感じやすくなります。
全体的な味わいを見るために非常に大切です。
2.口の中で日本酒を揺らす
舌全体に味わいをいきわたらせます。
また、口内にて空気と混ぜ合わせます。
するとより「具体的な味わい」を感じ取ることができます。
甘味、酸味、旨味、苦味を順番に確認
4つの味覚の型を順番に当てはめます。
そうすることで、全体的な味わいの形が見えてくるはずです。
基本的に感じた味わいのみを表現し、なければ書かなくて良いです。
それだけシンプルな味わいということになりますから。
軽快でなめらかなタイプの例
全体的に弱い風味。甘味少なく、キレの良いシャープな酸味が特徴。
軽快な旨味、こざっぱりとした短い余韻
一度に飲む量は少なめに
ちなみに、口に入れる日本酒の量は小スプーン1杯程度(5ml)と覚えておいてください。
多くて10mlです。
それ以上は判断が付きにくくなってしまうので止めましょう。
吐き出さない場合、酔っ払いってしまいますからね。
ほどほどが良いでしょう。
3.口の中に日本酒を入れた状態で鼻呼吸する
※含み香(ふくみか)の度合いをみます。
甘味や酸味がどのように変化しているかを確認しましょう。
※ちなみにこの状態で表す香りを口中香(こうちゅうか)とも言われています
4.飲み込むタイミングで鼻から息を出す
余韻の長さを感じる為に、含み香を最後まで確認します。
香りと味わいの長さを比較することで、最後の余韻の印象を感じ取ることができます。
5.飲み込んだ直後の余韻の時間を計る
香気成分の長さをチェックします。
飲み込んだ(吐き器)後は、※余韻の長さを測りましょう。
具体的には、口内の味わいが消えた長さです。
短ければ余韻は短く、長ければ余韻は長いと表現します。
※ちなみにこの状態で表す口内の香りを残り香(のこりか)とも言います※
6.余韻が消えるまでに複雑性(個性の特徴)を書き出す。
余韻が残っている印象がある状態で書いたほうが、より鮮明に書き出せるでしょう。
香気成分は結局なんだったか。
シンプルなのか複雑なのかを書き込みましょう。
■ 渋味について
日本酒は米から造られているので、葡萄の成分であるタンニン(渋み成分)はありません。
しかし、熟成酒・樽酒や木樽で熟成(貯蔵)された日本酒からは、渋みを感じることはあります。
渋味に関しては、上記を確認しながら利き酒する必要があります。
■ 利き酒の型を知ろう
利き酒の方法にも型があります。
この型にそって利き酒する事で、味わいを覚えるスピードが変わってきます。
大事なのは書いて覚えることです。
おおまかな味わいは記憶できても、細部まで記憶するのは難しいですよね。
基本的な「型」は以下のとおり。
1.外観(健全度) 2.アタック 3.テクスチャー 4.具体的な味わい 5.甘辛度(あまからど) 6.含み香(ふくみか) 7.余韻(よいん) 8.複雑性
具体的なテイスティング方法は下記の記事からどうぞ。
3.利き酒に差が出るわけ
利き酒する環境を整える
大部分は「どれだけ利き酒をしているか」によって変わってきます。
要は経験回数の差によって変わってくるのですが
(利き酒の)回数を重ねる前に重要な事があります。
それは利き酒が上手な方は、利き酒の環境が整っている場合が多い
ということです。
利き酒の環境作りに気を使っているポイント
以下のとおり。
・日本酒の利き酒温度は統一されているか ・体調は大丈夫か ・利き酒を行う場所は決めているか ・利き酒をする日本酒・酒器はそろっているか ・テーブルや照明は利き酒に適しているか ・部屋の温度・湿度は適切か
最初は上記の1つ守るというルールを設けてみましょう。
最終的にすべてクリアできれば理想です。
ちなみに、私はこんな事に気をつけています。
・日本酒の温度は15~18℃で行い、香味バランスの優れた状態で利き酒する。
・より静かな環境を選び利き酒する
・空腹の状態をなるべく避ける
さらに下記のような工夫をしてみましょう。
・香味の異なる日本酒を利き比べ
・頑張って毎日少しずつ利き酒
・すぐに飲まず香りを中心に分析
・利き酒の量を少量ずつ、ゆっくり味わう
まずは焦らずじっくり。目の前の日本酒を吟味してみましょう。
正確な利き酒をするために必要なこと
ここだけは押さえて欲しいポイントは3つ。
繰り返しますが、本当に重要です。
私が酒匠(さかしょう)というテイスティングのプロの資格を取得できたのも、常にかかさず飲んだ・利き酒したメモを取っていたからです。
普段の食事に合わせて飲むときも、友人や家族と食事しているときもどんな時でもメモをとっていました。
記憶は曖昧なもの。記録なら確実性は増します。
利き酒をする上でもっとも大切な箇所です。
その日本酒にはどんな個性・特性がありますか?
この問いを念頭に入れつつ、利き酒してみてください。
甘味が強い、香りがフルーティ、酸味が強い・弱い、ガス感がある etc..
このような特徴を見出すことができるようになります。
3.相手の好みや料理、体調に応じて、適切な日本酒を勧めるようになる
正確な味覚は感動を与える
仮に貴方がサービスマンだとします。
上手にお客様の求める商品説明ができていれば
お客様へ感動を与えるキッカケになります。
説明どおりの味わいだったなら、さらに次の日本酒をオーダーできるようになるでしょう。
いやいや、ウチの店はそういうの求めてないから
この様な飲食店もありますよね。分かります。業態によりさまざま。
もし、貴方がサービスを通じて利き酒スキルを活かしたいと考えるなら
環境を変えるしかありません。
サービスの栄える適材適所は沢山あります。
利き酒というスキルを生かしつつ
自身のスキルを向上できるような飲食店を探すのもアリです。
商品の特性を見抜く眼を養うこと
繰り返しですが、利き酒とは、良い部分や留意点(注意するところ)両方を見極める技術力です。
それが「商品特性」に直結していることを忘れてはなりません。
・吟醸香が強い、極端に辛口、発泡性が強い、値段が高い、季節限定、 要冷蔵、 など
これらの特性を把握することで、適切に管理・運用できるようになります。
つまり、日本酒の特性すべてを把握することによって、さまざまな飲用・運用を可能にします。
上記は私が一通り経験してきたことなので、皆様にもきっと出来るようになります。
是非とも日々の生活の中で、日本酒サービスに関わっていましたら、実践していただければと思います。
今回は以上になります。
まずは気軽に香りや味わいを楽しむ事から始めてみませんか
「利き酒の型」の内容に沿って記入し、ご自身の書いたコメントを見ながら振り返って飲んでみてください。
奥深そうな利き酒の世界もフタを開けてみれば、皆やっている事は同じです。
一見難しそうですが継続し何度も練習する事で、次第に慣れていきます。
今回の記事で、少しでも利き酒のヒントになれば幸せです。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
中畠 忍