これらを合わせて無濾過生原酒と言います。
日本酒の中でも特に複雑な香味が際立っています。
バリエーションが豊富です
Q.問題です。この中「無濾過生原酒」があるのは以下のどれでしょうか。
・本醸造酒
・純米酒
・純米吟醸酒
・吟醸酒
・大吟醸酒
・純米大吟醸酒
A.全てに当てはまります。
近年、無濾過生原酒の人気が高まっており、全国の酒蔵が力を入れているカテゴリーです。
特定名称酒それぞれの香味の違いがあります。これからその特徴なども踏まえ、解説していきます。
今回の目次
1.無濾過の特徴
2.生原酒の特徴
3.知っておくべき無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)の飲用・提供方法
1.無濾過の特徴
①無濾過(むろか)とは
名前の通り、濾過(ろか)していない状態で販売されている日本酒のことです。
無濾過には、様々な香り(甘味・酸味・旨味・苦味など)が際立っています。
さらに、荒々しく複ボリューム感ある味わいが特徴的です。
濾過の目的
無濾過を知るには、濾過の目的も知ると理解しやすいです。
濾過には日本酒造りの中で2回工程に分けられます。
1回目
工程
①上槽(じょうそう)する
↓※液体と酒粕を分ける※
②滓引き(おりびき)する
↓※細かく残った米や醪を沈殿させること※
③濾過
目的
⑴残った固形物(滓)を取り除くため
⑵酵母を取り除くため
⑶香味の調整をするため
2回目
工程
原酒を割り水した後に濾過
目的
⑷脱色するため
⑸香味の調整するため
つまり無濾過は、上記のような⑴〜⑸の目的をあえてしない、という事になります。
無濾過のメリット
複雑味のある味わいが人気
無濾過の場合、荒々しい味わいであったり、できたての複雑な味わいを感じる事が出来ます。
いっぽう、濾過をしている日本酒は、無濾過と違い、よりクリアな味わいに仕上がります。
また、販売される季節が蔵によって限定されるため、希少性のある日本酒です。
現在は多くの酒蔵から出荷され、近年はビギナーから愛好家まで幅広く人気が集まっています。
2.生原酒の特徴
生原酒の特徴
・生原酒とは火入れと呼ばれる(殺菌)をしない
・水で日本酒のアルコール度数を調整しない
つまり
「フレッシュで複雑味のある味わい」です。
なぜ生原酒が好まれるのか
・生原酒特有のフレッシュさ
・濃厚な味わい
・時とともに変化する香味
・希少性
上記のような特徴があるからこそ、日本酒ならではの世界観があるのではないでしょうか。
生原酒(生酒)は管理がとても大事です
時間の経過とともに、生原酒は味わいが変化します
火入れ殺菌をしないので、フレッシュさのある香味が変わりやすいためです。
そんなフレッシュさと濃厚な味わいを保つために、保存管理が非常に大事な要素となります。
保存管理には下記の3点が重要です。
・光に当てない
・温度変化の少ない、冷蔵庫へ保管する
・空気に長時間ふれない
味わいを損なわないために、他の日本酒以上に大切に保管する必要があります。
3.知っておくべき無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)の飲用・提供方法
この章では、無濾過生原酒の飲用方法を、また飲食業飲食業20年の中で培った経験から、提供方法について解説します。
さまざまな無濾過生原酒
生原酒には18度以外にも更に低アルコールの無濾過生原酒が存在します
・18度の無濾過生原酒
・15~16度の無濾過生原酒・低アルコール無濾過生原酒
18度の無濾過生原酒
「設計者である杜氏(とうじ)の技量の結晶」と言っても過言ではありません。
味わいの特徴
・複雑な香り、凝縮感があり、フレッシュで艶のある旨味が口全体に広がります。
- オススメの飲み方
アルコール度数の強さを生かした「そのままの飲用」をまずは試してから、様々な飲み方を試す方が良いと思います。
日本酒によって香味は様々だからです。
・フルーティ、米の風味がしっかりとしている。
・キレのある後味。
・苦味(アルコール感)が前面に出ている など
18度ならではの複雑さを感じつつ、ロック・加水・ソーダ割り、フルーツ漬け、リキュールなどと合わせてお楽しみください。
オススメの提供方法
ポイント
・各酒蔵がオススメしている飲み方をお客様へ提案する
・酒販店のオススメを取り入れる
・店舗で様々な飲み方を試してからお客様へ提案する
確実な方法は、酒蔵オススメの飲み方をお客様へ伝える方がベストです
インターネットでも色々な日本酒をアレンジした情報がのっています。
ですが、ネット情報のみを信じて割り方などを提案する事は、飲食店として適切な判断とは言えないですよね。
まずは酒蔵のHPや卸して頂いている酒販店から情報を得た方が、信用性が高いと思います。
15~16度の無濾過生原酒
15~16度というと、普通に出荷されている日本酒と、あまり大差のない度数となっています。
これは追い水(おいみず)と呼ばれる方法を使い、日本酒を絞る前に加水する事で、16度で完全発酵するように調整します。
味わいの特徴
・フレッシュな香りで、種類によっては甘味を思わせる香りや花のような香り、穏やかな原料香を思わせる香りなど、さまざまなバリエーションがあります。
・柔らかい口当たり、まろやかな風味が味わえます。
オススメの飲み方
冷酒・常温・ぬる燗・熱燗何でも大丈夫です。
注意が必要なのはフルーツ香りのする薫酒(くんしゅ)タイプです。
ぬる燗までは、ほのかな吟醸香(ぎんじょうか)を感じさせてくれます。
しかし、熱燗にするとツンとした香りでアルコールによる刺激を感じやすくなります。
カチ割り、加水するタイプではないです。
そのまま注いで飲む事をオススメします。
吟醸酒・大吟醸酒・純米大吟醸酒は薫酒タイプでしたら、冷酒がオススメです。
オススメの提供方法
唎酒師・飲食店の方はそのまま冷酒での提供をオススメします。
無濾過の特性を生かしセールストークが言えると良いでしょう。
「空気に触れる時間の長さで風味が変わります」
「冷酒でも温度が上がるにつれて、香味の変化を楽しめます」など
温菜や温かい料理にはもちろんお燗も提案できます。
味わいを知っている酒類担当者や唎酒師にアドバイスをもらうと良いと思います。
低アルコール無濾過生原酒
アルコール度数15度未満の「無濾過生原酒」を指します。
味わいの特徴
・わたあめのような甘いフレーバー、シャープな酸味を思わせる香り、こざっぱりとしたクリスピーな風味から、旨さをしっかり感じ取られる味わいなど、低アルコールらしさを感じさせない香味も存在する。
- オススメの飲み方
アルコール度数の低さと口当たりの軽さがウリ。乾杯用の一杯目から、濃いめの日本酒の前にオススメするなどの考慮が必要。冷酒からぬる燗まで、幅広い飲用方法がある。
まとめ
・やさしい甘味・旨味・スッキリとした後口
・アルコールを感じさせない口当たりの軽さ
・低アルコールでも飲用方法の幅が広い
商品の中には12度~の度数もあり、よりアルコールの余韻を感じさせないフルーティさを楽しめます。しっかりと冷やしつつ、フルートグラスやカクテルグラスに注ぎ、カジュアルさをアピールすることが出来ます。
オススメの提供方法
ポイント
・低アルコールという点を活かし、ビギナー向けに販促
・食前やカジュアルシーン向けに提案
・季節に応じて冷酒~ぬる燗にも対応可
基本は冷酒で提供し、米の旨味が豊かなタイプはぬる燗にも対応できます
たくさんある日本酒ジャンル
日本酒の中でも、「無濾過生原酒」の世界はまだまだ需要が伸びていくジャンルです。
また、低アルコール無濾過生原酒タイプも、今後も目が離せません。
さらに今回説明したジャンル以外にも以下のようなタイプも存在します。
- 濾過をしていた場合は「生原酒」
- 火入れをしていた場合は「無濾過原酒」
- 加水していた場合は「無濾過生酒」
無濾過生原酒をさらに深堀りすると、もっと奥深い世界が待っています。
いずれにしろ、少しでもさまざまなタイプがあるんだなぁ~と知って頂ければ幸いです。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。
中畠 忍
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